Algomatic Tech Blog

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書評『LangChainとLangGraphによるRAG・AIエージェント入門』

こんにちは。NEO(x) の宮脇(@catshun_)です。

2024年もあとひと月程となりましたね。 今年は多くの企業から RAG に関するリリースが発表され、同時に AIエージェント の研究開発が盛んに行われた年だったかと思います。

現時点での AIエージェント の市場認知は未だ低いですが、OpenAI, Google, Anthropic の動向を見ると、2024年は技術者に認知され、2025年は事業開発者に認知され、2026年はマーケターに認知される という流れになるのでは、と社内でも話しています。

とはいえ、新しい技術を独学でキャッチアップするのは大変ですよね...。

ということで今回は、今後も盛り上がりが期待される RAG/AIエージェント をキャッチアップするのにちょうど良い実践本について紹介します 🦜📕

LangChainとLangGraphによるRAG・AIエージェント[実践]入門
西見公宏,吉田真吾,大嶋勇樹 著
B5変形判/496ページ, 定価3,960円(本体3,600円+税10%)

まえおき

株式会社ジェネラティブエージェンツのみなさんとは、イベント等でよくお話しする機会があり、 特に西見さん (@mah_lab) とは TokyoAI Talks の AI エージェントセミナー で登壇者としてご一緒したり、 Algomatic のポッドキャストにもご出演いただいたりと、AIエージェントの技術コミュニティを先導する一人として大変お世話になっています。

今回は著者の方々のご厚意で、私も本書のレビュワーとして参加させていただきました。

本書について

本書では OpenAI API をはじめ、LangChain や LangGraph を用いて RAG や AIエージェント などの LLM を最大限活用するための手法を、実際に手を動かしながら開発・理解できる実践本です。 強気の 496 ページにわたって一歩一歩丁寧に解説が記述されているため、自然言語処理や機械学習に詳しくない、LLMプロダクトを構築したことがない、といった方々にも分かりやすい内容になっていると思います。

誰向けの本か

  • LLMによる本格的な業務アプリ開発に取り組みたい方
  • RAG アプリケーション開発の実践的な知識を習得したい方
  • AIエージェント システムの開発に取り組みたい方
  • RAG や AI エージェントの仕組みについて体系的な知識を習得したい方

構成

目次は以下のとおりです。 LangChain, LangGraph だけでなく、RAG, AIエージェントの基礎理解・構築が可能な章立てになっています。

第1章 LLMアプリケーション開発の基礎
第2章 OpenAIのチャットAPIの基礎
第3章 プロンプトエンジニアリング
第4章 LangChainの基礎
第5章 LangChain Expression Language(LCEL)徹底解説
第6章 Advanced RAG
第7章 LangSmithを使ったRAGアプリケーションの評価
第8章 AIエージェントとは
第9章 LangGraphで作るAIエージェント実践入門
第10章 要件定義書生成AIエージェントの開発
第11章 エージェントデザインパターン
第12章 LangChain/LangGraphで実装するエージェントデザインパターン
付録 各種サービスのサインアップと第12章の各パターンの実装コード

なにが良かったか?

1. LangChain, LangGraph の最新動向について把握できる

LangChain や LangGraph は LLM と親和性の高いライブラリであるため、その開発スピードも速く、半年前にキャッチアップした内容が大きく変わっていたりします。 本書では 2024年11月 時点での最新情報を幅広く丁寧に紹介しており、実際に提供されているコードを手元で動かしながらライブラリの動作について理解を深めることができます。

特に LangGraph の章では、私自身がキャッチアップできていなかったチェックポインタの動作やデータ構造について詳細に解説されており、AIエージェントでしばしば問題とされる追跡・解析可能性について、その具体的な解決策について理解を深めることができました。

2. RAGやAIエージェントについて、著名論文を交えた背景知識に加えて、評価などの『手法以外』の部分について理解できる

6章では Advanced RAG について紹介されており、HyDE や RAG-fusion、リランキングやハイブリッド検索について、その実装方法を理解することができます。 また 8 章では AIエージェントの概要について紹介されており、BabyAGI や ReAct、AutoGen や MetaGPT など、AIエージェントとして一般的に知られている手法やプロダクトについて、体系的に紹介されています。 日本語で丁寧かつ網羅的に解説している記事や書籍は現時点で非常に少ないため、「AIエージェントについて教えて」と尋ねられて際に自信を持って薦められる一冊かなと思いました。

3. エージェントデザインパターンの個別解説

これまで Agent Design Pattern Catalogue について、腰を据えてキャッチアップする機会がなかったので、11章は個人的に一番嬉しい章でした。

AIエージェントに対する認識は、以前登壇した際の下図と変わりませんが、最近は「エージェントとは何か?」ではなく「Agentic UX、Agenticness を反映したプロダクトとは何か」について考える機会が多くあったため、とても頭の中が整理された気がします。

AIエージェントについての説明

ちなみに私の中では以下のような共通項があるのかなと腹落ちしたのですが、未だ回答は持ち合わせていないので、本書を読んで「こうした観点もあるよ」という方がいたらぜひお話しさせてください。

  • キャラクタ性のある柔らかい推論・アルゴリズムによる固い推論の両側面があること
  • 永続的なループであること(24-365体制)
  • 高い専門知識で業務フローを予測できること
  • ユーザの認知範囲を超えた(行間/空気を読んだ)行動をすること
  • プロアクティブな push 提案ができること
  • 観測可能性・予測可能性・指示可能性を持つこと

おわりに

本記事では『LangChainとLangGraphによるRAG・AIエージェント入門』の書評ということで、実際にレビューした所感等について紹介しました。

Algomatic では 生成AI を活用した事業開発等を行っています。 LLM やエージェントを用いた事業開発に興味がある方は、下記リンクからカジュアル面談の応募ができるのでぜひお話ししましょう!

jobs.algomatic.jp